今年の梅雨入りは、今のところ例年通りになりそうとのことです。
少しずつ蒸し暑さを感じる日も増え、空を見上げると厚い雲が広がる日も多くなってきました。これから迎える雨の季節に、「早く晴れないかなあ」と感じる方もおられるかもしれません。
しかし、雨の日の空をよく見ていると、ときどき不思議な光景に出会うことがあります。厚い雲に覆われていても、その雲のふちだけが、ふっと明るく光って見える…そんな不思議な光景。
以前、ピアニストの上原ひろみさんが、コンサートの中でこんな言葉を紹介してくださいました。
『Every cloud has a silver lining(どんな雲にも銀色のふちがある)』
これは、どんな困ったことやつらい出来事にもその先には必ず光がある、という意味の言葉です。
雲が空を覆っているとき、私たちはつい「暗い空だ」と思います。けれど、その雲の向こうには、いつも太陽があります。
光がなくなったわけではありません。ただ、今は隠れているだけなのです。
私たちの人生も、これとよく似ています。
うまくいかないとき。
思い通りにならないとき。
先が見えなくなるようなとき。
そんなときは、まるで空が雲に覆われたような気持ちになることがあります。
けれども、仏教ではこう考えます。
今の出来事も、すべて「縁」によって起こっている。そして、その縁はまた次の縁へとつながっていく。今は苦しい出来事でも、あとから振り返ってみると「あの経験があったから今がある」と思えることが、人生には少なくありません。雲は、いつまでも同じ場所にとどまりません。必ず動き、やがて空は明るくなります。
だから昔の人は、こんなことわざを残しました。
「一寸先は闇」
先のことは分からない。だからこそ足元をよく見て進みなさい、という意味です。しかし私は、あえてこんな言葉も大切にしてみたいと思います。
「一寸先は光」
今は見えなくても、ほんの少し先には、光が待っているかもしれません。梅雨の空に広がる雲の銀色のふちのように、私たちの毎日の出来事の中にも、きっと小さな光があるはずです。雨の日には雨の日の恵みがあり、曇りの日には曇りの日の光があります。
気持ちが沈む日もあるでしょう。思うようにいかず、立ち止まってしまう日もあるかもしれません。そんなときは、無理に元気を出そうとしなくてもいいのだと思います。
好きな音楽を聴きながら、少し空を見上げて、また一歩だけ前を向いてみる。
そうして歩いているうちに、いつの間にか雲が流れ、空が明るくなっていることも、人生にはあるのではないでしょうか。
