のんびりだるまとーく

今日のとーく

咲く前の時間も“春”

2026年03月01日(日)

3月に入ってくると、寒さは残っているのに、少しずつ季節が動き始めていることを感じます。
朝の光がやわらぎ、夕方の空も、冬とは違う色になってきます。けれども、景色そのものはまだ大きく変わらず、花もほとんどがつぼみのままです。

この時期は、春の入口に立ちながらも、「まだ実感がわかない」と感じやすい季節です。
私たちはつい、花が咲いてからを春だと思い、形が整ってからを大切な時間だと考えてしまいます。

でも、花は咲く前に、土の中でしっかりと準備をしています。
目には見えなくても、少しずつ力をたくわえながら、その時を待っています。

そうです…咲いていない時間も、確かに春なのです。

3月の後半には、春分の日を迎えます。
春分の日は、昼と夜の長さがほぼ同じになる日。
自然の中で、明るさと暗さがちょうどつり合うこの日は、昔から大切にされてきました。

仏教では、この春分の日を中心とした前後七日間を「春彼岸」と呼びます。彼岸とは、「向こう岸」という意味の言葉です。
私たちが生きているこの世界を「此岸(しがん)」、迷いのない安らぎの世界を「彼岸」と呼び、そのあいだを歩んでいく道のりとして人生を見つめてきました。

昼と夜が等しくなる春分の日は、どちらかに偏りすぎないことを教えてくれます。

忙しさに追われすぎていないか。
自分の気持ちを後回しにしていないか。
お彼岸は、そんな日々の歩みをそっと見つめ直すための時期です。

この季節のお参りは、ご先祖さまのためだけのものではありません。
手を合わせながら、自分が今どこに立っているのかを確かめる時間でもあります。
きちんとできてから、落ち着いてからでなくてもかまいません。
今の自分のままで立ち止まることに、意味があります。

花がまだ咲いていなくても、春はもう始まっています。
答えが出ていなくても、道の途中に立っているだけで、いのちは確かに進んでいます。

春分の日と春彼岸は、「整ってから進む」のではなく、「立ち止まりながら整えていく」ことを、やさしく教えてくれる季節なのかもしれません。